【日南民商】けんちゃんのおじゃまします No.9
近年、減農薬や有機野菜が注目されています。先日、無農薬で長年農業をされている武田康典さん(串間支部・北方班)を訪ね、お話しを伺いました。
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そうやな、もう30 年になるな。
造園業との兼業で始めた。そん頃の農業政策はひどくてな、"補助金を出すから米作るな"という減反政策。
工業製品の輸出の見返りに外国から安い農産物を輸入するわけよ。大企業の犠牲じゃな。
そしたら「飯が食えん。もう農業をやめる」って悔し涙を流す仲間が出てきた。
日頃から「何とかしたい」、そう思ちょった仲間のグループで消費者が望む"安心・安全"の農業へ舵を切って合鴨(あいがも)や有機農法を目指した、それがきっかけじゃな。
苦労ね? うーん、数え切れんな。けどな、健康志向や有機野菜が浸透したお陰で、黒米(くろまい)の人気が出た。
アントシアニンと食物繊維が豊富なんが、肉食の現代人に向いちょると静かなブームらしい。25 年掛かったがな(笑)。
ミルキークイーンというコメもある。モチモチして冷めてもうまい。これは串間の気候にいい。
山口県の孫が「じいちゃんのおいしいおコメ」と学校で宣伝してくれたらしいわ。
やっぱり嬉しいがな、元気が出る。
嬉しいといえば、こんな事もあった。看護師の娘が「TPPは農業だけじゃない。医療も影響受けるんよ」と、突然にTPP反対を言い出した。
「おまえも勉強したね」とてげ褒めたが、これをやられたら日本の農業はひとたまりもねえ。
資本力と耕作面積で太刀打ちできん。
やっぱ、長い間の農業政策の間違いの影響じゃな。農家人口が減って耕作放棄地が増えちょる。
土は一度荒れるとなかなか元に戻らん。企業が農地を買えるようにもなり、もうけ本位になった。地域やまわりの農家のことは考えん。
国の政策や税金で苦しむのは農民や中小業者ばっかり。消費税が上がれば「もう、農業はでけん」とみな言っちょる。
え、将来の夢? 息子と一緒に農業を大きくやって、暮らしが成ることかなあ。
その為に大企業優先の政治を変えて欲しいな。中小零細を大事にしてこそ国は栄える、選挙で変えんといかん。
還暦を新たなスタートに、仕切り直して頑張ちょるよ。
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武田さんは、永く串間市の農業委員を勤め、いまも現職。
自然保護や反原発運動にも長く携わり、「人間は水と空気と食べ物で生きている。大切にせんとな」と熱っぽく語る横顔に、信念に生きる農業人の人生が垣間見れました。